「加給年金って、ずるくない?」
そんな疑問を持って検索している方も多いのではないでしょうか。
実際、加給年金は条件を満たすと、老齢厚生年金に年間数十万円が上乗せされることがあります。
2026年度(令和8年度)の配偶者に対する加給年金額は年24万3,800円。さらに、受給権者の生年月日に応じた特別加算があり、昭和18年4月2日以後生まれの方なら、合計で年42万3,700円になります。
5年間受け取れば、単純計算で約212万円です。
一方で、「誰でも年間42万円もらえる」という制度ではありません。
夫婦の年齢、厚生年金の加入期間、配偶者自身の年金などによって、受け取れる人と受け取れない人が分かれます。
この記事では、「加給年金はなぜずるいと言われるのか」を具体的な夫婦のケースで確認しながら、もらえる条件や注意点をわかりやすく解説します。
この記事のポイント
- 加給年金が「ずるい」と言われる理由
- 2026年度の加給年金額
- 夫65歳・妻60歳の場合の具体例
- 年齢差によって受給期間がどう変わるのか
- 加給年金がもらえないケース
- 加給年金と振替加算の違い
加給年金が「ずるい」と言われる3つの理由
なぜ加給年金は「ずるい」と言われるのでしょうか。
大きく分けると、次の3つが考えられます。
- 年間40万円を超えるケースがある
- 夫婦の年齢差によって受給期間が変わる
- 同じように保険料を払っていても、対象になる人とならない人がいる
特に気になるのが「年齢差」です。
たとえば、夫が65歳になった時点で妻が60歳だった場合と、妻が64歳だった場合では、ほかの条件が同じでも配偶者が65歳になるまでの期間が異なります。
加給年金の配偶者には、原則として「65歳未満」という年齢要件があるためです。
つまり、単純化すると「妻が60歳なら長く対象になる可能性があるのに、64歳なら短い」という違いが生じます。
これが「年齢差のある夫婦のほうが得なのでは?」という疑問につながります。
加給年金はいくらもらえる?2026年度は年42万3,700円のケースも
2026年度の加給年金額は以下のとおりです。
| 対象 | 年額 |
|---|---|
| 配偶者 | 24万3,800円 |
| 1人目・2人目の子 | 各24万3,800円 |
| 3人目以降の子 | 各8万1,300円 |
配偶者については、さらに特別加算があります。
昭和18年4月2日以後生まれの受給権者の場合、特別加算は17万9,900円です。
したがって、
24万3,800円 + 17万9,900円 = 42万3,700円
となります。
月額にすると約3万5,300円です。
仮に5年間、同じ条件で受給できたとすると、
42万3,700円 × 5年 = 211万8,500円
になります。
「加給年金はずるい」と感じる人がいるのも、この金額を見ると理解できるかもしれません。
ただし、これはあくまで「5年間、支給条件を満たし続けた場合」の単純計算です。
実際には、配偶者の年齢や年金受給権などによって支給されないケースがあります。
ケース1:夫65歳・妻60歳ならどうなる?
具体例で見てみましょう。
夫
- 65歳
- 老齢厚生年金を受給
- 厚生年金の加入期間が20年以上
妻
- 60歳
- 65歳未満
- 夫によって生計を維持されている
このような夫婦で、その他の条件も満たしていれば、夫の老齢厚生年金に妻を対象とした加給年金が加算される可能性があります。
日本年金機構では、厚生年金保険の被保険者期間が原則20年以上ある人が65歳に到達した時点などで、生計を維持している配偶者や子がいる場合に加給年金が加算されるとしています。
妻が60歳なので、65歳になるまで5年あります。
そのため、ほかの条件が変わらなければ、比較的長い期間にわたって加給年金の対象となる可能性があります。
ケース2:夫65歳・妻64歳なら?
では、妻が64歳だったらどうでしょうか。
夫が65歳になった時点で妻は64歳なので、配偶者の年齢要件は満たす可能性があります。
しかし、妻が65歳になるまでの期間は1年しかありません。
つまり、単純に比較すると次のようになります。
| 夫65歳時点の妻の年齢 | 65歳になるまでの期間 |
|---|---|
| 60歳 | 5年 |
| 61歳 | 4年 |
| 62歳 | 3年 |
| 63歳 | 2年 |
| 64歳 | 1年 |
| 65歳 | 原則として配偶者分の加給年金の対象外 |
このように、夫婦の年齢差によって加給年金を受け取れる期間が変わる可能性があります。
これが「年齢差がある夫婦は得で、年齢が近い夫婦は損なのでは?」と感じる理由の一つです。
ただし、年齢差が大きければ必ず得というわけではありません。
ここが非常に重要です。
妻が65歳になると加給年金はどうなる?
配偶者が65歳になると、原則として配偶者分の加給年金は終了します。
その後、一定の条件を満たしていれば、今度は妻自身の老齢基礎年金に「振替加算」が加算される場合があります。
つまり、
夫の年金に加給年金が加算される
↓
妻が65歳になる
↓
夫の加給年金が終了
↓
条件を満たせば妻の年金に振替加算
という流れです。
ただし、振替加算には生年月日などの条件があります。
日本年金機構によると、振替加算の対象者は原則として昭和41年4月1日以前生まれなどの要件があります。
そのため、「加給年金が終わったら、全員が同じように振替加算をもらえる」と考えてはいけません。
加給年金は「ずるい」どころか、もらえない人もいる?
ここで注意したいのが、加給年金には細かな支給停止条件があることです。
たとえば、配偶者自身が一定の老齢厚生年金の受給権を持っている場合や、障害年金を受け取れる場合には、配偶者加給年金額が支給停止となることがあります。
さらに、配偶者が実際には年金を受け取っていなくても、一定の老齢厚生年金を受け取る権利がある場合には、加給年金が支給停止となるケースがあります。
つまり、
「夫が65歳で妻が65歳未満なら、必ず42万円もらえる」
ということではありません。
ここを知らずに「加給年金はずるい」と判断すると、制度の一部分だけを見てしまうことになります。
加給年金をもらうための主な条件
加給年金の対象になるか確認するときは、次のポイントをチェックしましょう。
1.厚生年金の加入期間が原則20年以上ある
加給年金は、原則として厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある人が対象です。
ただし、一定の中高齢者については、20年未満でも特例によって対象となる場合があります。
2.65歳到達時などに配偶者がいる
老齢厚生年金を受ける人が65歳に到達した時点などで、生計を維持している配偶者や子がいることが基本的な条件です。
3.配偶者が原則65歳未満
配偶者については、原則として65歳未満という年齢要件があります。
4.配偶者自身の年金による支給停止に該当しない
配偶者が一定の老齢厚生年金などを受け取る権利を持っている場合、加給年金が支給停止になることがあります。
したがって、「夫の年齢」「妻の年齢」だけで判断するのは危険です。
加給年金は繰下げ受給すると増える?
もう一つ注意したいのが、年金の繰下げです。
「年金を繰下げれば年金額が増えるから、加給年金も増えるのでは?」
と考える人がいますが、加給年金を考える場合は注意が必要です。
老齢年金の繰下げ制度では、受給開始時期を遅らせることで年金額が増額されます。
一方、加給年金は通常の老齢厚生年金の増額分と同じように考えることはできません。
また、老齢厚生年金を繰下げている期間は、加給年金を受け取ることができません。
そのため、加給年金を受け取れる人が「とにかく年金を繰下げれば得」と判断するのはおすすめできません。
繰下げを検討するときは、老齢基礎年金と老齢厚生年金、それに加給年金を分けて考える必要があります。
加給年金と振替加算は何が違う?
「加給年金」と「振替加算」は、名前が似ているため混同されがちです。
簡単に整理すると、次のような違いがあります。
| 項目 | 加給年金 | 振替加算 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 一定の条件を満たす配偶者・子がいる年金受給者 | 一定の条件を満たす配偶者 |
| 加算される年金 | 老齢厚生年金 | 老齢基礎年金 |
| 配偶者の年齢 | 原則65歳未満 | 原則として配偶者が65歳になった後 |
| 主なタイミング | 受給権者が65歳になるときなど | 配偶者が65歳になるときなど |
加給年金は、主に65歳未満の配偶者などを対象として、老齢厚生年金に加算されるものです。
一方、振替加算は、加給年金の対象となっていた配偶者が65歳になった後、一定の条件を満たす場合に、その配偶者の老齢基礎年金に加算されます。
ただし、振替加算には生年月日などの条件があります。
結局、加給年金は「ずるい」のか?
結論として、加給年金を単純に「ずるい制度」と考えるのは適切ではありません。
確かに、条件を満たせば年間40万円を超える加算を受けられるケースがあり、夫婦の年齢差によって受給できる期間にも違いが生じます。
その意味では、
「同じように年金保険料を払ってきたのに、なぜ自分は対象外なの?」
と感じるのは自然なことです。
しかし、加給年金には、
- 厚生年金の加入期間
- 配偶者の年齢
- 生計維持関係
- 配偶者自身の年金
- 年金の受給状況
など、複数の条件があります。
制度としては、一定の条件を満たした人の老後の生活を支えるために設けられた年金の加算です。
したがって、
「ずるい人だけがもらえる年金」ではなく、「条件に該当した人に支給される制度」
と理解するのが正確です。
あなたは加給年金をもらえる?まず5項目をチェック
最後に、自分が対象になる可能性があるか確認してみましょう。
- 老齢厚生年金を受け取る予定がある
- 厚生年金の加入期間が原則20年以上ある
- 65歳未満の配偶者がいる
- 配偶者との間に生計維持関係がある
- 配偶者自身の年金による支給停止に該当しない
すべてに当てはまっていても、実際の受給可否は個々の年金記録などによって変わります。
加給年金の加算には届出が必要とされているため、対象になりそうな場合は年金事務所などで確認しておきましょう。
まとめ
「加給年金はずるい」と言われる最大の理由は、条件を満たすと年間数十万円規模の年金が上乗せされ、さらに夫婦の年齢差によって受給できる期間が変わる可能性があるからです。
2026年度は、配偶者への加給年金が年24万3,800円。昭和18年4月2日以後生まれの受給権者なら特別加算を含めて年42万3,700円となります。
ただし、誰でも受け取れるわけではありません。
「夫65歳・妻60歳だからもらえる」と単純に判断するのではなく、厚生年金の加入期間や配偶者自身の年金、生計維持関係などを確認することが大切です。
「加給年金はずるいの?」と考えるよりも、まずは**「自分の夫婦は対象になるのか?」を確認すること**が重要です。
